矢貫隆

取材の足に、と担当編集者が用意してくれたのは日産自動車の「NV200」。けれど、これ、ただのNV200ではなく、ニューヨーク市で使われる本物のイエローキャブだった。いかにもニューヨークのタクシーらしく、前席と後席を防弾仕様のアクリルガラスで仕切っている。運転手と客は、スイッチをONにしてマイクを通してしゃべり、料金の受け渡しは、パチンコ屋さんの景品交換所と同じで、ガラスの下からすっとだす。 実際に運転してみると、こりゃ、確かにタクシー向きの自動車だと思った。左ハンドルなのに、つまり、久しぶりに運転する左ハンドル車なのに、不思議なことに、ハンドルが左にあるとか右だとか、その種の感覚をまったく意識させない。それどころか、運転しやすいとかしにくいとか、それすら感じさせないのである。言いようによっては「運転手を選ばない」となるわけだから、NV200、まさにタクシー車両向きと言うべきだろう。